マーケティングにおけるフレームワークの中でも、特に有名な「4P分析(よんぴーぶんせき)」。
聞いたことがある方も多くいらっしゃると思いますが、4P分析をしっかりと理解して活用することができていたり、例などを挙げて第三者へ説明することができる方はどれだけいらっしゃるでしょうか?
もしかしたらあまり多くないかもしれません。 この記事では、すでに4P分析を知っている方や、初めてこの言葉を聞く方でも、どのように活用すればいいのか、どんな点に注意すればいいのかを、みなさんもご存知のハーゲンダッツを例にして分かりやすく解説していきます。
4P分析の意味とその目的
4P分析をすでに知っている方はちょっとした復習のために、初めて4P分析に触れる方はその概要を理解していただくために、まずは4P分析とは一体どのようなものなのか、その目的は何なのかを説明していきます。
4P分析とは?
4P分析とは、エドモンド・ジェローム・マッカーシーというアメリカのマーケティング学者が提唱したもので、「マーケティングミックス」とも呼ばれる分析手法のことです。以下の4つの単語の頭文字をとり、4P分析と呼ばれています。
- Product(製品)
- Price(価格)
- Place(流通)
- Promotion(販売促進)
この分析手法はターゲット市場を分析し、「どんな製品を、どれくらいの価格で、どのような広告媒体を駆使して、どのようにして消費者へ届けるか」といった戦略を練るための手法です。
4P分析の目的
4P分析は、「消費者に対してどのように製品やサービスを提供していくか、その道筋を明確にする」ことで、販売を促すことが目的です。商品やサービスに対して適切な価格設定を行い、ニーズに合致した場所で効果的に宣伝を行えるため、売り上げアップに繋がります。また、上記の4つの視点から分析を行うことで、具体的な戦略を練ることが可能となります。
4P分析を構成するの4つの要素
4P分析とはどのような手法で、いったい何を目的とするのかが分かったところで、次は4Pの各要素の詳細を説明していきます。
Product(製品)
Product(製品)では、自分たちがどのような商品やサービスを提供するかを決定します。 一言で商品やサービスと言っても簡単なものではありません。「消費者に対してのメリットは何か?」、「消費者のニーズを満たせるのか?」などの要素までも考える必要があります。
Price(価格)
Price(価格)は言葉の通りですが、Product(製品)の段階で決定した商品やサービスをいくらで消費者へ提供するかを決定します。この価格を決定するうえで重要なのが以下の3つの点です。
・商品やサービスの内容に対して妥当な金額設定であるか?
・十分な採算を取れる設定であるか?
・競合に対して差別化は図れているか?
価格設定を誤ってしまえば、どんなに良いものを提供しようとしても消費者の手に届くことは難しくなってしまいます。
Place(流通)
Place(流通)では、狙っているターゲットへ確実に提供するために「商品やサービスをどこで消費者へ提供するか」を考えます。
例えば、高品質で価格もかなり高めに設定された高級品をコンビニで販売しても、消費者がそれを購入することは考えにくいですよね。「コンビニ=身近で手軽なものを購入する場所」と考えている人が多いため、高級品を売るのには適していない場所であると言えます。
Promotion(販売促進)
Promotion(販売促進)では、「どの広告媒体を利用して宣伝をするか」などの販促方法を決定します。どんなに良い商品やサービスであっても、その情報が消費者のもとへ届かなければ意味がありません。若者向けであればSNSをメインで利用するだとか、ターゲットに合ったアプローチ方法を考えましょう。
4P分析を行うことの2つのメリット
4P分析の概要や目的が分かったところで、次はメリットについて触れていきます。4P分析を行うことで得られるメリットは大きく分けて次の2点が挙げられます。
製品や価格など多方面からのアプローチにより、偏った戦略にならない
Place(流通)の項目で説明したように、コンビニで高品質な高級品を販売することは得策ではないと言えます。4つのPにおいて、それぞれのポイントをすべて押さえることで、商品やサービスを適切な価格や場所で販売したり宣伝することができます。
ターゲットのニーズに合った製品やサービスの提供が可能
Product(製品)、Price(価格)、Place(流通)、Promotion(販売促進)のすべてを決定するプロセスにおいて、その根底には「ターゲットのニーズに合致しているか」という考えがあります。
したがって、4P分析をしっかりと行うことで必然的にターゲットのニーズに合致した商品やサービスを提供することが可能となります。
4P分析での2つの注意点
これまでに4P分析の概要やメリットについて説明しましたが、ここでは4P分析を行う上での注意点を2つ説明します。
4Pの要素間で整合性が取れていることを確認すること
4Pの各要素において整合性が取れていない場合、どんなに良質なものでも売れないといった可能性が高くなってしまいます。商品やサービスに対して適切な価格や販売場所などを設定できているか等をしっかりと確認しましょう。
4Pはすべてセットで考えること
4つの要素の内、1つでも欠けてしまえば4P分析の効果は損なわれてしまいます。それぞれの要素を掛け合わせて整合性を取ることで4P分析は効果を発揮します。
ハーゲンダッツにおける4P分析の例
4P分析の事例として、ここではハーゲンダッツを紹介します。 下の表に沿って、要素ごとに解説をしていきます。
Product(製品) | ・自分へのご褒美などちょっとした贅沢 ・競合他社が比較的同価格帯で勝負している中、高級化で差別化 ・乳牛1頭ごとの体調に合わせた飼料の調整や、牧草が育つ土づくりなどの徹底した生産環境 |
Price(価格) | ・ハーゲンダッツ:295円 ・スーパーカップ:140円 ・スーパーカップsweet’s:220円 ・牧場しぼり:140円 ・爽:140円 ・MOW:140円 |
Place(流通) | ・スーパーやコンビニで販売 ・全国どこでも入手可 |
Promotion(販売促進) | ・開封時のクレーターの形状 ・TwitterやInstagram等のSNSでハッシュタグを利用(#ハーゲンハート) |
Product(製品)に関しては、ハーゲンダッツは自分へのちょっとしたご褒美や、ちょっとした贅沢をしたいと考えている人をターゲットとした商品のため、その生産方法や品質にはかなりこだわっています。
表にも記載があるように、乳牛1頭ごとの体調に合わせた飼料の調整や、牧草が育つ土づくりなど徹底した生産体制を敷いており、品質は他社製品と比較してもかなり高品質であると言えます。
Price(価格)に関しては、明治のスーパーカップやグリコの牧場しぼりなど、多くの有名カップアイスの価格が140円前後であるのに対し、ハーゲンダッツはその2倍近い295円が小売り希望価格となっています。
ご褒美や贅沢といった部分に相応しい価格設定で他製品との差別化を行っています。
Place(流通)に関しては、ここでは「場所」という概念で見ていきましょう。他のカップアイスと同様にスーパーやコンビニなどの身近な場所で購入が可能です。いくら高級品と言えど、身近な場所で購入できるため、より消費者の手元へ届きやすくしています。
Promotion(販促活動)に関しては、メインターゲットである20~34歳女性のテレビ離れが進む中、SNSに注目し、InstagramやFacebookを活用して販促活動を行っています。例えばInstagramは若年層のユーザーが多いため、おしゃれで話題になるような投稿をしています。
さらに「幸せのハーゲンハート探し」といった、開封時のアイスのクレーターの形状がハートになっているものを探すというのが話題にもなりました。逆にFacebookでは「真面目モード」として、新製品案内等のオフィシャルな情報を発信するのに利用しています。このように同じSNSでもそれぞれの特徴を活かし、内容を変えていくことで有効な販促活動を行っています。
まとめ
たとえどんなに良質な製品やサービスを考え付いたとしても、価格設定や広告の使い方等を誤ってしまっては、消費者に対して上手くアプローチすることができません。「誰に、どのような価値を提供したいのか」を明確にし、それを達成するために的確な4P分析を行いましょう。