資産形成とは将来のためお金を計画的に貯めていくことです。
計画的に貯めていくためには、What(何に)、When(いつ)、How much(いくら)を把握しゴールを設定することが重要です。
いつまでに、いくら必要なのか?逆算して貯金ペースを決定するのに加え、誰が?も明確にする必要があります。近年では共働きが一般化しており、お互いに生活費と最低限の貯金分を出し合って残りは各人の自由な形をとっている世帯も多いです。
小さな出費であれば場当たり的な貯金から支払うことができますが、住宅資金や教育資金はなんとなく貯めたお金では対応できない多額であることがほとんど。お互いにいくら貯金があるか知らない世帯ですと、いざとなったときに適切な対応をするための貯金がない。なんてこともあり得ます。
こういった事態を避けるためにも、ゴール(What、When、How much、Who)を明確にし、貯金ペースを確認しながら計画的にお金をためていきましょう。
この記事を書いた人
関東住み。30代で2人の子供を持つパパ。上の子がイヤイヤ期に突入し、下の子はハイハイで縦横無尽に動き回るなかで日々奮闘中。学生時代は理系を専攻しており大学院も卒業。ノルウェーや韓国での国際学会にも参加した実績あり。その後、大手インフラ企業の営業職を経験した後、FP(ファイナンシャルプランナー)のとして多くの人の資産形成をサポートしている。
資産形成の種類は2つ
資産形成には 「貯蓄」か「投資」の2種類あることは皆さんご存じでしょうか?
この2を明確に区別できていないと「準備したい方向と準備している方向」のズレが生じてしまいまうす。
例えば、金利によるバックを加味して「投資」だと思い、銀行にお金をためていても、現在の低金利ではその恩恵をあずかることは難しく、ほぼ「貯蓄」となり、全然お金が増えないことにストレスを感じてしまったり、安定したお金を貯めたいのにリスク資産に大きな割合を貯金して減ったタイミングでチョックを受けたりしてしまいます。
ぜひ「準備したい方向と準備している方向」を一致させるために「貯蓄」と「投資」を理解しましょう。
貯蓄とは
どこかにお金を預けてはいるが、使いたい時に自由に引き出すことができる流動性が高いお金を指します。銀行預金などが代表的な例です。
貯蓄の特徴はすぐに引き出せること、貯まっている金額に変化が小さいことが挙げられます。(銀行の通帳の額はほとんど増えたり減ったりしませんよね)一方で額面の変化が小さいために物価上昇の変化には対応しづらいです。
貯蓄の使い方としては数年以内に使うようなお金を貯めるのに向いています。旅行の費用であったり家の頭金であったり近いタイミングで使うものは貯蓄で準備するようにしましょう。
投資とは
働かせて増やすためのお金です。貯蓄と比較するのであれば、すぐに引き出せないということも特徴としてあげられます。「投資」という漢字は、資(お金)を産む仕組みにお金を投げるという意味です。
投資の特徴は「銀行預金」にお金を置いておくよりも金額が大きくなる可能性があることです。反対に金額が大きくなる可能性と同じくらい金額が減る可能性もあります。(たまに投資は必ず増えると思われている方がいらっしゃいますが、減る可能性も勿論あるのでご認識に注意してください笑)
併せて、投資しておくと後述するインフレへの対策となります。
(補足)投資と投機の違いについて
投資と投機の違いについて考えたことはあるでしょうか。投機なんて聞いたことないよ!という方もいらっしゃるかと思います。投資と投機は似ているように見えますが本質的には全く異なります。
投資=お金を増やす仕組みにお金を投入すること
投機=お金が増えるかもしれない機会にお金を投入すること
分かりづらいかと思いますので、以上をさらに感覚的にお伝えしますと、
投資=投入している金額が大きくなっても不安にならない→なぜ増えるか根拠の説明ができる(再現性がある)
投機=投入している金額が大きくなるに従って不安になるもの→なぜ増えるか説明ができない(ギャンブル)
と理解していただけると分かりやすいと思います。勘違いしやすいのでしっかり押さえておきましょう。「投資」だと思って「投機」をしていると必要なタイミングでお金がない事態に陥ることもあるので気をつけてください!
なぜ資産形成が必要か
資産形成の2種類について説明したところで、そもそもなぜ資産形成が必要なのか語っていきたいと思います。
皆さん、人生100年時代なんて言葉を聞いたことはありませんでしょうか?100年ってめちゃくちゃ長いです。100年まででなくても80年、90年でも私個人は長いな〜と思います。
会社でも30周年なんて聞くと長いなと思いますし、創立100年だと老舗ですよね。要は、人生って長いんです。
では、そんな長い人生の中でお金は行き当たりばったりで大丈夫でしょうか?さまざまな出費があり時には数年で1000万円以上の出費が重なる時期もあります。計画なしで大丈夫でしょうか?だからこそお金に関して計画的に準備する資産形成が必要となります。
感情的な理由を記載しましたが下記に論理的になぜ資産形成が必要なのか3つの観点(ライフイベント、インフレ、老後)からご紹介します。
ライフイベントから考える
人生には結婚、出産、マイホーム購入などたくさんのライフイベントの可能性があり大きな費用がかかってきます。ライフイベントの中には数千万単位でかかる費用もあるため計画的にお金を貯める資産形成が必要となります。
下記に子どもの教育資金と住宅費用の参考値を記載します。皆さんの希望する生活水準とライフイベントを合算して、世帯収入と比較すると過不足はいかがでしょうか?(そもそも過不足の確認方法もわからないよ、、、という人はFPに相談してみてください。)
関東圏であれば私立受験の割合は増えるでしょうし、住宅価格も他地域とは全く異なります。だからこそ、希望する生活に合わせてお金を計画的に貯める必要あります。
インフレから考える
「インフレ」とはモノやサービスの価格=物価が上昇することを指します。つまり、同じ一万円でもインフレになると購入できるモノやサービスの量が減ってしまいます。
例えば、大学の授業料は国立大学、私立大学ともに平成元年から平成15年にかけて増加しており、大学の教育サービスの価格が上がっている=インフレと捉えることができます。以下で大学の授業料と入学料の値上がりについて表でまとめました。
国立大学 | 国立大学 | 私立大学 | 私立大学 | |
授業料(円) | 入学料(円) | 授業料(円) | 入学料(円) | |
平成元年 | 339,600 | 185,400 | 570,584 | 256,600 |
平成5年 | 411,600 | 230,000 | 688,046 | 275,824 |
平成10年 | 469,200 | 275,000 | 770,024 | 290,799 |
平成15年 | 520,800 | 282,000 | 807,413 | 283,306 |
せっかく大学費用を準備していたのに授業料が上がったために希望する進学ができないのは困ると思うので、インフレを考慮して計画的にお金を貯める必要があります。
老後から考える
日本の平均寿命はご存知でしょうか?
厚生労働省の「簡易生命表(令和2年)」による2020年における日本人の平均寿命は男性が81.64歳、女性が87.74歳です。仮に60歳で退職すると夫婦は20年以上にわたり労働せずに過ごしていくことになります。
無計画で20年以上を乗り越えることが可能でしょうか?楽勝な人は限りなく少ないと思います。例えばのケースを考えてみましょう。
毎月の生活費:20万円※(老後必要生活費は19.6万円)
退職年齢:60歳
寿命:85歳
必要な貯蓄=20万円/月×12ヶ月/年×(85―60)年=6000万円
(※20万円というのは厚生労働省が発表している退職後の夫婦に必要な必要最低限の生活費であり、娯楽なしで生活するだけの費用ということです。)
必要な貯蓄6000万円の財源をどうやって確保するかが問題です。年金で賄えると思う人は準備しなくて良いですし、将来の年金受給金額に期待できないと思う方は準備しなければいけません。
さらに仮に半分の3000万円を貯めるとして、30歳〜60歳の30年間で貯める場合、年間100万円貯める必要があります。
子どもが独立してからの55歳〜60歳で貯めるには年間600万円貯める必要があります。
55歳からの収入を考えた際に年間600万円が可能な世帯であれば30代、40代は準備しなくて大丈夫です。しかし、難しい場合は30代から貯める必要があります。
単純な算数の計算ですが実際に生活しながら考えると意外に気がつかないものですよね、、、
資産形成の始める手順
資産形成は貯金ペースを確認し、必要な現金を貯めて、残りのお金を預金以外の資産に移すという手順で実施していきます。
①貯金ペースの確認
まず実施することは現在の貯金ペースの確認と必要な貯金ペースとの比較です。
ポイントは毎月いくら貯まっているのか、ボーナスでいくら貯まっているのか、年間の貯金ペースは毎月+ボーナスの貯蓄額と一致しているのかという点です。
理想:毎月の貯金額+ボーナス時の貯金額=年間の貯金額
意外と一致していないことが多いので確認をしてみましょう。
貯金ペースが確認できたら将来のライフイベントに必要な貯金ペースと比較し過不足を確認しましょう。不足している場合は収入を上げるか、支出を下げるか、運用して貯蓄を増やすかのいずれかの対応が必要となります。
➁必要な現金を貯める
次のステップは現金を貯めることです。どれくらいの現金があれば良いかは諸説ありますが個人的には生活費の1年分〜2年分くらいの予備資金+大きな支出費用で十分だと思います。
下の表に世帯主の年齢と一年間での世帯支出を載せます。30代であれば予備資金として25万円×12〜24ヶ月=300〜600万円あれば十分です。(ざっくり現金は500万円あれば大丈夫です)
世帯主の年齢 | 25 ~ 34 | 35 ~ 39 | 40 ~ 44 | 45 ~ 49 |
支出 (家賃以外) | 243,050 | 281,406 | 290,737 | 346,670 |
予備資金に加えて近い将来に使いそうな現金は別途貯めておきます。大きな支出としては結婚式の費用、家の頭金、車の費用などです。
補足として、家の頭金は多く入れなければいけないと思っている方も多いですが資金計画ができているのであれば頭金なしのフルローンで組んでも大丈夫です。理由として現在(2022年9月)は低金利時代であるため頭金に入れるよりも投資をして後から増えた金額でまとめてローン返済できる可能性が大きいからです。ただし、頭金を入れないケースでは月々のローン返済が増えるので注意が必要です。
➂預金以外の資産を取り入れていく
現金が準備できたら残りの余剰なお金を預金以外の金融資産に換えていきます。
金融資産には銀行預金、証券、債券、保険などがあります。それぞれに特徴があり自分がどの程度までリスクをとっても大丈夫か(リスク許容度)を考えながら資産のバランスを作っていきます。
各金融資産の特徴やリスクについては次回以降の回にお話ししたいと思います。
なお、資産形成だからと言って証券や保険など預金以外も取り入れないといけないというわけではありません。
物価上昇のリスクや長生きのリスクを踏まえた上で十分なお金を準備できていれば問題はありません。大事な事は将来に向けて計画的にお金を貯めていくことです。
そろばん亭の個人的見解〜早くから始めた方が良い〜
今回は資産形成の基本について触れていきました。最後に個人的な考えもご紹介したいと思います。
資産形成は早くから始めた方が良いと思います。具体的には家庭を持ったらすぐに。独身であれば300万円※銀行に貯まったら始めることをオススメします。
(※独身だったら生活費20万円×12ヶ月=240万円あれば予備資金としては十分です)
もちろん早く始めた方が利益が大きくなる面もあるのですが主な理由は2つです。
- 若い時の方がお金が貯まりやすいから。
- 年齢を重ねるにつれて暇(時間)がなくなるから。
まず、若い時の方がお金が貯まりやすいことを証明するためにライフステージの一例を示します。
- 独身時代
- 既婚
- 既婚+子ども
- 既婚+子ども+マイホーム
- 既婚+子ども+マイホーム+教育資金
私がいつもお客様のライフプランを考えている経験上でお金が貯まりやすいのは「②→①→③→④→⑤」順番です。やはり若い時の方がお金が圧倒的に貯まりやすく楽なので早くからの資産形成をおすすめします。
また、若い時に生活レベルを上げてしまうと後の人生でなかなか生活レベルを下げることのできないので気を付けた方が良いと思います。
本人は贅沢していると思っていないので生活レベルを下げることはかなり大変です、、
年齢を重ねると仕事とプライベートの両面で時間がなくなっていきます私のお客様の働き方をみていると年齢を重ねる毎に部下ができたり、大きなプロジェクトを任されたり、2つの部署を兼務してり、年々忙しくなっているように感じます。
次にプライベートでは結婚、出産、子どもとの時間、行事ごとと週末も仕事はしていないですが自由な時間はどんどん少なくなっていきます。
では、平日は仕事、休日はプライベートでどんどん忙しくなる中で後から資産形成を考えるかというと考える方はすごく少ないです。
実際に40歳前後のお客様とお話しすると忙しすぎて自分で情報収集する時間が取れないのでプロにお任せしたいと思い相談にきましたと方がほとんどです。
一方で早いうちに資産形成の基盤を作っておくと後は基本方針に沿ってお金を貯めていくだけなのでかなり楽に効率的にお金を貯めることができます。
まとめ
今回は資産形成の基本についてお話ししました。資産形成って難しそう、、、と思われたかもしれませんが、普段銀行に貯金しているのも資産形成の1つなのでそんなに難しく考えなくても大丈夫です!
1つ大事な点は、計画的にお金を準備すること。計画的に準備するためにはゴール設定“Who(誰が)、What(何に)、When(いつ)、How much(いくら)貯めるのか”を決めて取り組んでみてください!
ゴール設定、Who(誰が)、What(何に)、When(いつ)、How much(いくら)できそうにない、、、わからない、、、という方はFPに相談してみてください。きっと考えが整理されると思います。
いつから始めた方がいいの?の問いに関しては貯金が独身は300万円、世帯は500万円の現金が貯まったら始めることをオススメします。年齢を重ねるほど忙しくなりますからね。
お金は知っているか知らないか、対策の有無で大きな差が生まれてくるのでご家族そしてご自身のためにもぜひ良い知識を得て行動していただけると嬉しいです!