ユートピア、理想郷、こんなキーワードをみなさんは聞いたことありますか?様々な文献、アニメ、ドラマなどでも取り上げられているそれは、物語上での設定だと思われがちですが、テクノロジーが発達した現代社会において、実現されつつある仕組みの1つかもしれません。
今回はユートピアとは何か?を解説したうえで、「機動戦士ガンダムseed destiny」という作品内で登場する「destiny plan」と関連させて、どのようにアニメで描かれているのか、なぜ現代社会において実現されつつあるのかを考察していきます。
ユートピアとは?
まずユートピアとは一体何なのかについて明確にしましょう。
ユートピアとはイギリスの思想家トマス・モアが1516年にラテン語で出版した著作「ユートピア」に登場する架空の国家の名前です。
その国は理想郷とも言われ、現実には決して存在しない理想的な社会として描かれています。しかし、現代人がイメージする理想郷とは違い、トマス・モアらによるユートピアには非人間的な管理社会の色彩が強く、決して自由主義的・牧歌的な理想郷ではないとされています。
destiny planとは?
今回はこれととても類似点が多いシステム、社会構造的なものが作品内で登場するアニメ「機動戦士ガンダムseed destiny」と関連させていきます。
2004年10月9日から2005年10月1日まで、MBSを製作局としてTBS系列で全50話が放送されたアニメーション作品で、物語の内容は、架空の近未来、遺伝子操作された新人類コーディネイターと、遺伝子操作されていない通常の人類ナチュラルとの争いを描いた作品です。
ガンダムと聞くと誰しもがロボットを想像するでしょうが、今回は焦点をロボットに合わせるのではなく、物語に登場した一つの社会構造を取り上げます。それが「destiny plan」です。
「destiny plan」とは、コーディネイター側の最高評議会議長により提唱された社会システム構想であり、人間の遺伝子を解析する事でその人が持つ先天的な適性と能力を調査し、その解析結果を基にその人を最適な職業や役割に就かせて、より効率的な社会運営を目指すと言うものです。
その結果として個人間のいさかい、しいては国家間の争い事が無くなるという人類救済措置であり、そぐわない者は淘汰、調整、管理される世界でもあります。
これにより決められた運命の中で、未来に対する不安が解消され、悩みや、苦しむ事無く生きられる世界であるとされています。一方でこれが実現すれば職業選択における個人の自由意志が一切認められない徹底的な管理社会となりますが、最終的には全ての人間が平和で幸せに生活できる、というものです。
destiny planに対する主人公たちの選択
ここで前半に述べたトマス・モアらのユートピアと比較していきましょう。destiny planでは、個人の能力を最大限引き出せる環境により、人間関係のいざこざも少なくなる、まさに理想郷が完成します。
しかし徹底した管理社会であり、そこに自由主義はありません。「ユートピア」本編にあったような時計の針のように規則正しく人間が行動したり、物理的・社会的に衛星的でないにしろ、「ユートピア」と「destiny plan」この二つの点においてかなり似ていると言えます。
しかし、「機動戦士ガンダムseed destiny」の主人公達はこのプランを、人々から決定権を国家が取り上げ、管理するものとし、世界を殺すシステムと断言、否定しました。
他にも自らの社会的ポジションに誰もが満足しているため、競争心が逓減する、潜在的いわば後天的な遺伝子覚醒に順応できない、ないしは否定されるなどあったかもしれませんが、特に「そぐわない者は淘汰、調整、管理される世界」という面に対して強い嫌悪感を持ったのではないでしょうか。
一見争いのない、素晴らしい世界のように感じられますが、実際は独裁的社会、ユートピアとは対比の存在である「ディストピア」だと捉えたのかもしれません。
destiny planは現代社会では受け入れられるのか?
作中ではこのプランの実行は失敗に終わりますが、現実世界で仮に実行された場合どのような社会現象が起こるのでしょうか?
私は案外積極的に受け入れられるのではないかと考えます。
反対意見ももちろんあると思いますが、これに対して武力などを用いて押さえつけるのではなく、根気強い説得を、例えば就職難、ニート問題解決などへの足掛かりとして取り上げてみたり、職種を確定させるのではなく、推奨するに変更すれば我々の毎日はより充実感のあるものに変わると考えます。
また、現実の私たちの世界でもすでに遺伝子を解析するサービスは始まっています。いまだ技術が発展途上で信頼性や論理性の面から賛否が分かれていますが、遺伝子解析で判定できる範囲は身体能力、精神面などと多岐にわたります。
しかし、もし仮に今後技術革新が進み、世界各国で広くはなくとも、どこかの国で遺伝子解析が行われるようになったらどうなるでしょうか。あくまで作品のなかの空想のものであったこの「destiny plan」が現実になる日は近いのではないでしょうか。
身近で利用できる遺伝子解析
実はすでに私たちの身近でも自分自身の遺伝子を解析して、様々なことに利用できるサービスは存在します。
さすがに「destiny plan」のように適正な職業、立場まで解析するには至っていませんが、綿棒でほほの内側(口腔粘膜)をこするだけで、個人差のある体型や、お酒の強さなどは分析することは出来てしまいます。
太りやすさの場合、5種類の肥満遺伝子を検査することで、過食傾向、高カロリー嗜好、さらに糖質、脂質、 たんぱく質の代謝が苦手な体質かどうかを知ることができます。
アルコールの強さの場合、2種類のアルコール関連遺伝子を検査することで、ただ単にお酒が強い(飲める)・弱い(飲めない)を調べるだけではなく、 「どんな体質なのか?」「飲酒により、将来健康に対してのどんな悪影響がでやすいのか?」を知ることができます。
まとめ
いかがだったでしょうか?トマス・モアが語っているユートピアは「現実には決して存在しない理想郷」でありますが、技術の発達とアニメーションでのアイディアが彼のユートピア構想を実現する日も近いと私は考えます。
また今回記事で取り上げた「機動戦士ガンダムseed destiny」とその前作「機動戦士ガンダムseed」は以下の配信サービスで見ることが出来ます。
ガンダムシリーズ以外にも多くのアニメやドラマを見ることができますので、まだこういったサービスに登録されていない方は、一度利用してみてはいかがでしょうか?無料期間もありますので、お試しでの利用も可能です!